霧の中を電車に乗って、
ふと気づくと、さっきまで後ろからついてきていた太陽が、姿を消していた。
電車は霧の中を走っているようだ。
朝もやなのか、あちこちから立ち上る野焼きの煙のせいなのか、わからない。
幻想的な霧の中を走っていた。そのとき、
薄い膜をかぶった金色の太陽が、霧の向こう側からゆっくりと現れた。
***
あれから、2ヶ月。またも病院のベッドの上にいる。
朝から、もう何時間経ったろう。
霧越しの淡い光とはいえ、直接見つめていたせいか、その残像が瞼の裏に残っている。こうして横たわって目を閉じると、金色の太陽が復活。まだ霧の中にいるようだ。
ブラインドの隙間から、青空が見える。
こんないい天気の日に狭いベッドで寝ていると、なんだか本当に病人になってしまったような気がして、まいったなあ。
今日、二度目の手術を終えた。小さな塊となったものが、ころん、ころん、と幾つかとれて、「固まって出にくくなっていたんですね」と言われた。今回は腹痛もほとんどなく、何も変わらないようなすっきりしたような、変な気分だ。
とにかく、あれから2ヶ月もお腹の中にいた塊だものな~。
塊という字は魂と似ている、とふと思う。
小瓶の中のそれと対面したとき、懐かしい気がした。
***
最近、繰り返し読んでいる本。
今日もベッドの上で読んでいた。
人の死を描きながら、どこか明るい。
信州の田舎の情景を描くときの、彼の筆致が好きだ。医者として人として、静かに見つめる視線が好きだ。割り切れないものを抱えながら、もがいて生きている姿が好きだ。
声高に叫ぶことはないけれど、地に足が着いている。
この人は強いと思う。
しばらくは、彼の本を隣に置いて眠ることになるだろう。
こんにちは。
南木 佳士 さん、阿弥陀堂便りを書いた人なのですね。
本は読んでないのですが、映画のあの静かな語りが印象に
残っています。
この本も読んでみたくなりました。
>懐かしい気がした・・・
何だか涙が出そうになりました。魂はいつも心の中に・・・
もうこーさんの一部ですものね。
by タックン (2007-02-11 14:42)
ちょっと出血が長引いている感じがしたので・・・本当は心配だったんだよ。
悲しいけれど・・・病院に行かれたと知って、ほっとしました。
大丈夫ですよね、こーさんはもう、前を向いて歩いているから。
by (2007-02-12 13:24)
こーさん具合が悪かったのですか。
悪いものが取れたようでよかった。
だれも、しばし足を止めて休むときが必要ですよ。
ベッドの上はつらいけど、我慢して早くよくなってくださいね。
青い空は逃げたりしないから、あせらないでね。
by mamire (2007-02-12 21:56)
2度の手術をされたんですね。お疲れ様でした。
「塊と魂」、云うか云わないかの違い…。ちょっと悲しいけれど、不思議な感じ(漢字)です。
ともあれ、お大事にしてくださいね~!
by toro (2007-02-13 08:42)
タックンさん、
ありがとうございます。
そうなんです。『阿弥陀堂だより』、私も最初は映画館で観ました。それから原作を読んでみたら、またおもしろかった。おすすめします。
映画は長野県飯山で撮影したということもあり、偶然にも知り合いが出演してました。当時からお世話になっていた劇団の大将で、映画館で「大将~~っ!」って一人興奮しておりました。
魂は心の中に。ええ、いつも一緒です。
こぎんさん、
ありがとうございます。
ははは。長い生理です~。でも、もう大丈夫。
おんちょろちょろ、おんちょろちょろ、です。
前を向いたり、後ろを向いたり、分かれ道では棒を倒してみたり、相変わらずですが、道はどっかにつながっているからねー。ま、歩いていればどっかに出るでしょう。
mamireさん、
ありがとうございます。
悪いもの・・・ではないんですよ(笑)。大事なものとさよならしました。
この数ヶ月、半分引きこもりのようになりながら、ゆっくりと休養しました。そしたら、新しい道が開けてきたみたいです。
> 青い空は逃げたりしないから、
これは名言ですねー。いつか、つかわせていただこうかしら。
toroさん、
ありがとうございます。
云うか云わないかの違い・・・とは、なんだか深いなあ。
言葉にすると、心に宿るということでしょうか。
元気でヒマなもんだから、この3日間は歩き回ってました。つらいといえば、湯舟に浸かれないことだけです。この時期、かけ湯だけでは寒すぎます~。
by こーさん (2007-02-13 23:39)