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無色

皆さま、お久しぶりです。お元気ですか。

11月は一度も更新しないまま、そして12月もはや半分終わってしまいました。

季節はすっかり、冬です。

・・・といっても、今年は暖冬で、まだ雪の欠片も見えません。去年の今頃は、屋根も地面もすっかり雪に覆われていたっけ。

 

         

 

なんだか、怒涛のごとく日々が流れていった気がします。

とりあえず近況ですが、N市に越してからはじめた介護の仕事を辞め、今再び無職となりました。

 12月10日付で、無職^^

 「無職生活」。

 いやあ~~♪

 

いや、ね、今後の生活の不安を考えると、決して喜んでいるわけではないんですが、無職、無色・・・。無という言葉には「はじまり」の予感がして、その響きがなんとなく好きなのです。

 

とりあえず、無色。

これから、何色にでも染められる。

そんな自分でありたいです。

 


 

手帳の日記から・・・

 

12月2日(土)

外は昨日と同じく、晴れたり曇ったりの天気。

ときどき雲の切れ間から日が差して、生き返る心地がする。

あたたかくやわらかく、からだがほぐれていく。

光を遮っている頭上の雲は、すぐ上の山に雪を降らしているのだ。 もう何回、山に雪が降ったろう。里へ降りてくるのも、そろそろのはず。

・・・青空はすぐに雲にかき消されてゆく・・・。

 

 

12月6日(水)

午後2時。いつものように太陽が山の陰に入ると、たちまち辺りが暗くなる。こうなると洗濯物も乾かない。布団もダメだ。あきらめて、全て取り込む。

畑のほうへまわると、大きな欅が残照を浴びて気持ち良さそうに、空へ手を伸ばしていた。

冬の樹は強い。しなやかで美しい。私もこの樹のようにありたい、と願う。・・・。

  

 

 

 

さて、忙しい日々でした。

心を失くしたわけではありませんが、

心の中がざわざわとざわついて、どうしようもない日々でした。

 

11月は結局一度も、パソコンを開くことがありませんでした。

今まで自分の心の中を整理するために、経験し、咀嚼し、吐き出していた言葉たちを、ひと月半も心に抱えたままでいたわけです。

そりゃあ、ストレスもたまるってもんです^^

何度かパソコンの画面に向かってみたものの、長時間見つめていることができずに、結局断念。原因は妊娠でした。

 

 

不妊治療の結果として、11月に赤ちゃんができたことがわかりました。さっそく、職場の人にも報告をし、

「ああ、よかったねえ」

「頑張ってせっかく授かったんだから、この仕事はやめんさい」

「仕事は他の人でもやれるけど、子どもは母親しか守ってやれんよ」

「からだが大事。仕事はまた、子どもの手が離れたらできるから」

 

辞めろ、辞めろ、の大合唱でした(笑)。私の年齢のことやら(おそらく最後のチャンス)、仕事の過酷さゆえに、かけてくれた言葉。仕事は好きでしたが、みんなの言葉がどんなにうれしかったか。

介護職という性格上、力仕事も多く、まわりはそのことを心配してくれました。病院のドクターには「重いものを持つことと流産の関連性はない」と言われましたが、職場の方々の理解で、比較的力を使わない軽い仕事に変えていただきました。そして、12月10日付で職場を辞することに決めました。

 

 

  

退職の日。

朝の申し送りの最後に用意された私のための時間。

それは笑顔の別れ、喜びの門出となるはずでした。

 

でも、直前に受けた検査で、事態は変わってしまっていました。

 

 

12月7日(木)

定期検査。

異変はすぐにわかった。心臓が見えない。

お腹の中で赤ちゃんは、眠っているみたいだった。

静かに、息を止めていた。

ドクターはため息をつき、「何か原因があってということではありません」と言われた。責めないように、という配慮なのだろうと思った。・・・。

 

 

 

 

12月10日(日)

最後の日の朝。

最後の挨拶をするためだけに、職場に出かけていきました。

 

「まだここに、赤ちゃんはいます。

でも、もう息をしていません」

 

そう報告し、お礼を言って、職場を去りました。

そして翌日、手術を受け、お腹の赤ちゃんとさよならしました。

9週目に入ったところでした。

 

 

  

12月11日(月)

早朝5時半に、つれあい運転の車で出発。8時病院着。

9時前には診察台に上り、エコー。

「残念ながら、状況は変わってません」と言われ、麻酔を打たれる。状況が変わることなんてあるんだろうか。そんなことはありえないよなあ。ドクターの言葉がおかしくって、心の中で反論してみる。

・・・だけど、みんなきっと、もしかしたら・・・と思うんだろうなあ。誰もそう思うんだろうなあ・・・。

 

気がつくと、手術が終わったところだった。すぐに意識が戻ってしまったようで、下着をつけたのも憶えている。呼びかけにも応え、ベッドへも半自力で移乗した。今回の麻酔は前回よりも強いと聞いていたのだけれど、ヘンだなあ。

10時頃にはすっかり麻酔も覚めてしまった。昨夜から絶飲食で一滴も水を飲んでいないはずなのに、尿意を強く感じる。出血を防ぐためにガーゼを詰めていて、それが膀胱を圧迫しているのだそうだ。が、まだ歩いてはいけない、とのことでガマン、ガマン・・・。

眠ってしまおう、と思うが、意識が冴えてしまって目を閉じてもうまく眠れない。喉の渇きと、腹痛に苦しむ。

 

窓際のベッドは明るく、ロールカーテンの隙間から見える空がとてつもなく青い。

「青いなあ・・・」

身を起こすと、5階の窓から見える景色は、建物の屋根、屋根、屋根ばかり。駅と駅ビル。建設中のビル、オレンジ色の大きなクレーンがゆっくりと動いている。向かいのビルの窓からは、サンタの人形を運ぶ人影が見える。ビル、道路、車・・・緑ひとつない。

どこを向いても山が見えない。木々の陰も、公園もない。あまりにも人工的な乾いた光景は味気なく、それでまた横になる。

空が青い・・・。雲ひとつ浮かんでいない。

どこか遠くへ行きたいなあ。そう思ってしまうような気持ちのよい空。空が誘っている・・・。

 

空っぽのお腹をさすりながら、昨日の歌舞伎の面々を思った。

こんなときだけど、やっぱり行ってよかった。

N市で開かれた「東濃歌舞伎大会」には、お世話になっている加子母歌舞伎の人たちも参加していた。9月に地歌舞伎でやったのと同じ演目ということで、私はこの日の舞台を前々から楽しみにしていた。

その期待に違わず、味わい深いすばらしい舞台だった。ほんとにみんな、うまいなあ。よその歌舞伎とはひと味もふた味も違う、役者から滲み出る「旨味」のようなものを感じる。

元気で活躍しているあの人たちが、いつも私を受け入れてくれる加子母の空気が、私を元気にしてくれているのだなあ。

そんなことを考えながら空を眺めていたら、青空が急にぽわん、と滲んで見えた。

 

 

ばいばい、赤ちゃん。

1ヶ月、楽しかったよ。

ありがとう。

 

 

 

赤ちゃんと、仕事と、いっぺんになくなって、

なんだか何にもなくなってしまったようで、

さびしいなあ。。 

 

仕事もしていないため、今は家でぷらぷら。手術の後は(安静を保つという理由で)日中はほとんど家の中で過ごし、おかげで、すっかりテレビっ子^^です。

ドラマをダラダラと見ながら、「泣かせる」シーンでまんまと泣いてしまいます。ほんとにいい視聴者。気がつくと、ぽろん、と涙がこぼれていて、こんなに涙もろかったっけ?って感じです。泣くほどのシーンでもないんだけどなあ。

 

思い当たったのは、

私、赤ちゃんのために、あんまり涙を流していないかもしれない、ということ。

医師に説明を受けたときも、つれあいに話したときも、職場の人に報告したときも、わんわんと取り乱して泣いたりしなかった。

いっぱいいっぱい泣いてあげられなかったから、その分の涙がよそに行ってるのかもしれないなあ。

 

 

ああ。

そういえばひとつだけ、戻ったものがあります。

食欲と体重。・・・あ、ふたつか。

 

なんだか無性に「美味しいごはん」が食べたくなって、もりもり食べてしまいます。

野菜たっぷり、根菜もたっぷり、出汁もきちんととって、ていねいにつくった美味しいごはんを三度三度、きちんと食べています。

幸せなことなんだなあ、と噛みしめつつ。

 

お腹いっぱいになると、

お腹がぽこん、とまあるくふくれて、

まるでそこに、いなくなった赤ちゃんがいるようなのです。

 

私が食べたたくさんのいのち。

食べることは、生きること。

生かされること。

命のふくらみを手のひらに感じながら、

ふくれた腹をさすりさすり、眠りにつきます。

 

しっかり、生きなきゃなあ・・・。

 

 


 

 

もうちょっと、ゆっくりしたら、

それから今後の生活のことやら何やら、考えるつもりです。

今はちょっとだけ、ずる休み(笑)。 

 

少しずつ、時間をかけて、世界を広げていこうと思います。

ブログのほうも、少しずつ・・・。

 

 

気がついたら、実家を離れて20年が経っていました。

千葉、東京で過ごした10年。

岐阜、長野で過ごしたこの10年。

次の節目に立っているのかもしれません。

 

 

 

さて次は、どこへ行こう。

私は、何になろう。

 

 


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コメント 12

toro

ずっと更新がされていなかったので、どうかしたの?何かあったの?と
ものすごく心配していました。
とりあえず、お体のほうは大丈夫ですか?
ちょっとぐらいのずる休みで罰は当たりませんよ~。
すこうし時間をもらったという気持ちで、ゆっくりとしてくださいませ、ね。
うんうん、節目かもしれません。そうそう。
それから赤ちゃん…何かを教えに来てくれたのかもと、
何だかそういう気がしました。慈しみと休養…そんな感じがします。
うまくはいえないけれど・・・。
そうして、新しい自分になりますね^^
by toro (2006-12-19 14:43) 

むらさき

時々拝読させていただいていたのですが
初めてコメントさせていただきます。
悲しみや戸惑いを抑えた文面が胸を打ちます。
 たくさん食べた命がまた新しい命を運んでくれると良いですね。
私もず~~っと 昔、宿った赤ちゃんをなくしました。
by むらさき (2006-12-20 13:50) 

なんということが起きていたのでしょう。
読み進めるうちに・・・(こーさんの文章好きだし)
コトの大きさが段々分かってきて・・・言葉もないです。
ちょっとゆっくり休養・・・神様の贈り物の時間ですね。
お家のこと、ご飯つくったり、いろんな工夫したりする時間・・・私も去年そうだった。すごく楽しくて。。。今も本音は戻りたいのだ。
暮らしを味わう・・・いいことだと思います。
by (2006-12-23 18:03) 

お帰りなさい、こーさん。
たくさん食べて、ゆっくり休んでくださいね。
こーさんとは、きっとまた会える気がしています。
いつになるか解らないけど・・・その日を楽しみに過ごします。
来年が希望に満ちた素晴しい年になりますように。
by (2006-12-31 21:43) 

こーさん

せっかく更新したというのに、またパソコンが不調に・・・。
なかなか、みなさんのところへおじゃまできません。
年末で実家に帰ってきており、九州からの更新です。(でも、こっちのパソコンも不安定なので、途中でダメになったら、ごめんなさい)。


toro さん、
ご心配いただき、ありがとうございます(涙)。
なんだか今年は、自分の気持ちを整理するための文章ばっかり書いてて、後ろ向きな日々だったなあ、と反省しています。でも、こうして気持ちをさらけ出す場があって、本当に助かりました。
書くことでどれだけ楽になったか・・・。そして、それを読んでくださる方がいる(コメントまでくださる方々も!)ということが、私の確かな支えとなっていました。ありがとうございます。

からだのほうは大丈夫なんですが、まだ血がちょろちょろ、ちょろちょろ、出ています。大好きな温泉にどかっと入りたいのになー。
>赤ちゃん…何かを教えに来てくれたのかも
そうそう、あれからやけに、夢を見るんですよ。友だちがたくさん出てくる夢。時間がいっぱいとれそうだったら、今年は「友だちに会おう!」ツアー(催行人員1名様より)を計画しています。全国各地、巡ってみようかな。
新しい年が、希望に満ちた年でありますように。toroさんも無理をしないでくださいね。
by こーさん (2006-12-31 22:25) 

こーさん

むらさきさん、
明けましておめでとうございます。
あたたかい言葉、ありがとうございます。むらさきさんもおつらい思いをされたのですね。
生まれ来る命、逝く命・・・、たくさんの命を見つめた昨年でした。別れがたくさんありすぎて、せつない思いもしましたが、自分がどれだけまわりの人に支えられて生きているか、ということを思い知った年でもありました。
富士山の写真、息を飲んで見つめてしまいました。正月早々、美しいものと出会えました。
by こーさん (2007-01-01 17:26) 

こーさん

こぎんさん、
明けましておめでとうございます。
神様の贈り物の時間・・・。さすが!いつもながら素敵なフレーズです。(うっとり・・・)。
こぎんさんのことばに、どれだけ癒され、励まされたことか。ありがとうございます。そして、アナタ様のブログはときに食欲増進剤となり、ときに旅ゴコロをくすぐり、「世界はすばらしいよ~~」「まだ未知のものがたくさんあるよ~」と興味をかきたてまくってくれました。忙しい中にも、パワフルに活動されている姿を見てると、元気が湧いてきます。
愛情の塊のようなこぎんさん。今年もみんなの笑顔の源でいてくださいね。でも、たまには休養して、ゆっくりと暮らしを味わって(笑)。こぎん刺しの新作発表も、楽しみにしています。
by こーさん (2007-01-01 17:44) 

こーさん

nadiさん、
明けましておめでとうございます。
ただいまあ(笑)。うーん、うれしい。また言わせてしまいました^^
お正月は実家で迎えているので、必要以上にたくさん食べてしまっています。あれも、これも、懐かしい味。この味を胃の腑に沁み込ませて帰らなければ。
一足先に新しいスタートを切ったnadiさん、新しい環境に慣れるのにてんてこ舞いの年の暮れだったと思いますが、体調は大丈夫ですか?「新しいnadiさん」。なんだか眩しく感じます。
東京へは年に一度は渡ってますので、きっとまたあのカフェで会えますね。もしくは、どこかの滝つぼで・・・(笑)。私もその日を心待ちにしています。
「希望に満ちた素晴しい年」
本当に。誰にとっても、そんな年でありますように。
nadiさん、いつも希望をありがとう。
by こーさん (2007-01-01 18:08) 

本年もよろしくお願いします。
こーさんにとって幸多き実り多き一年に
なりますように。
エールをおくることしかできませんが、
こーさんらしく颯爽と今年も生き抜いて
いただきたいです。
人生は多様な経験をつめばつむほど
豊かな滋味が味わえるのだとおもい
ます。こーさんだけの人生をかみしめて
味わっていただきたいです・・・
切ないおもいも糧におもえる日が来る
でしょう、いつか。きっと。
by (2007-01-04 10:46) 

こーさん

lightgreenさん、
幕の内ギリギリですが、明けましておめでとうございます。
新年のあいさつは、実は屋久島のホテルからです。
全国的に大荒れの天気のようですが、こちらも6メートルの高波で、昨日、今日と、船が欠航しました。明日の便で帰る予定なのですが、果たして出航するのかどうか・・・(笑)。山も雪が積もってます。
明日、時間があれば三岳酒造さんに行ってみようかと思ってるんですが、見学や小売はやってないとのこと。ちょっとでもお話が聞ければラッキーかなあ、と思っています。
>こーさんらしく颯爽と・・・
・・・って、どんなんでしょう(笑)。
>人生をかみしめて
人生を噛みしめつつ、
>切ないおもいも糧に
新鮮な魚をあてに、
三岳のグラスを傾ける日々です。
今年もよろしくお願いします。
by こーさん (2007-01-07 21:42) 

こりことソーダ

今年もよろしくね。
年賀状はギフに送ったので書き込みです。
こーさんのブログ、今頃読みました。
昨年中、歌舞伎の後何度か電話したりメールしたりしたんだけど、連絡とれなくて、どうしてるかな、と思ってました。ブログもPCの具合で見れなくって、なんか、ごめんね。
屋久島から、帰ってきたかしら?
実はわたしも2週間後に行くんだ。屋久島(笑)。また、ニアミスだね〜。いつになったら、一緒に旅行するんだろう(笑)。
こっちに帰ってきたら、また、ご飯食べておしゃべりしましょー。
いい年になりますよ。
あなたが幸せになることを願っていますから!
by こりことソーダ (2007-01-08 20:59) 

こーさん

こりこさま、
いや~ん。今年もよろしくね。幸せになろうね。
やっと帰ってきましたー。帰りの船は大荒れで(出航しただけラッキー)、酔って大変でした。
メール!・・・ごめんなさい。実は12月に変わったのです。あはは。
屋久島、母子旅行だったのですが、母の口から「屋久島」と出たとき、おかしくってね(笑)。だって、こりこさんの日記を読んだあとだったから。なんでこんなに志向(思考?嗜好?)が近いんだろう。いつか一緒に旅行しましょう。
では、近々ご連絡いたします~~。
by こーさん (2007-01-13 10:25) 

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